風邪・花粉症・コロナ

風邪

風邪の診察

かぜ(普通感冒)とインフルエンザ(流行性感冒)、新型コロナウイルス感染症は、原因や症状など似ているようで、経過と予後は少しずつ異なってきます。「自分は大丈夫」と油断していると重症化してしまうこともあるので注意が必要です。
かぜは、ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる、鼻やのど(上気道)の急性炎症の総称です。鼻やのどの粘膜から感染するため、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、のどの痛み、せき、たんなど、鼻やのどの症状が顕著にみられます。
インフルエンザは、インフルエンザウィルスに感染することで発症します。一般的な特徴は、38℃以上の急激な発熱があり、関節痛や筋肉痛、倦怠感や悪寒などの全身症状が現れ、鼻みず、せきなどの症状を伴います。
新型コロナウイルス感染症は、その名の通り2019年末に初めて感染が確認された新しいウイルス感染症で、皆さんご存知の通り、症状のバリエーションが非常に広いこと、そして「典型的な風邪の症状」をきたすことも少なくないことから、他の「風邪」と見分けることが簡単ではありません。一方で、見逃すと患者さん本人だけでなくその周囲や社会全体にも大きな影響を与えてしまう病気であり、しっかりと他の「風邪」と見極めなければなりません。

かぜ、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の違い

  かぜ(普通感冒) インフルエンザ 新型コロナウイルス感染症
原因ウイルス 冬季:インフルエンザウィルス、RSウイルス
夏季:コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス
通年:パラインフルエンザ、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウィルス
インフルエンザウィルス  新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) 
潜伏期間 2~4日間 2~5日間 1~14日間
感染性/感染経路 あまり強くない/接触または飛沫感染 強い/接触または飛沫感染 非常に強い/接触または飛沫感染、エアロゾル感染の可能性もあり
症状が現れはじめる部位  局所(鼻やのどなどの上気道が中心) 局所のほか、全身症状が現れることも多い 局所のほか、全身症状が現れることも多い
症状の現れ方 ゆるやか 急激 ゆるやかだが、急激に重症化、肺炎を合併することも多い
主な体調の変化 くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、せき、のどの痛みなど上気道の症状が中心 関節痛、筋肉痛、頭痛、悪寒などの全身症状が急激に現れる 発熱やせきなど初期症状はかぜやインフルエンザと見分けがつきにくい
その他に頭痛や倦怠感、食欲不振など味覚・嗅覚障害が現れることもある
検査方法 なし 抗原検査 抗原検査、PCR検査
治療方法 痛みや不快な症状をやわらげる対症療法が中心 対症療法に合わせて抗インフルエンザ薬を使用する 対症療法が中心
肺炎に進展した場合は抗ウイルス薬、血栓予防の抗凝固薬、免疫の暴走を抑えるステロイド薬を適宜使用し、集中治療や人工呼吸器など
治るまでの期間 多くは1週間程度 多くは1週間程度 軽症であれば5〜7日程度

新型コロナウィルスオミクロン株では、発熱、せき、鼻水・鼻づまり、喉の痛みといった症状が目立つ傾向にあり、風邪や季節性インフルエンザにもかなり似ていて、正直、症状だけで、風邪(かぜ)なのか、インフルエンザなのか、コロナなのか、を見分けるのはかなり難しいです。
積極的に新型コロナウイルス、インフルエンザの抗原検査を行い、診断をつける必要があります。特にご高齢の方、持病のある方、妊娠中の方は、「風邪をひいたかな?」と思っていつもなら家で休んでいたとしても、診断をしっかりつけることが重要になります。そのような時は早めに医療機関にご相談ください。

予防方法

いずれの感染症においても、マスクやうがい、手洗いなどで原因物質を寄せつけないようにする、不要不急の外出を避けて「3密」をつくらないようにすることが予防には有効です。
流行が収束したとしても、ウイルス自体が消滅したわけではありません。感染症にかからない、広めない生活を続けることが大切ですが、何らかの初期症状が現れた場合は、マスク着用など周りの人にうつさないことを心がけ、症状に変化があったり長く続いたりするようなら、自己判断をせずに医療機関や地域の相談窓口に相談してください。

花粉症/季節性アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎のなかで、スギやヒノキの花粉をアレルゲンとする疾患です。花粉症は、一度発症すると自然治癒が非常に難しく、毎年アレルギー症状に悩まされます。東京都内におけるスギ花粉症有病率は、48.8%(2017年)、2人に1人が花粉症であると言われています。

花粉症の症状

花粉症の4大症状:くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ

くしゃみ 連続してくしゃみが出ます。回数が多く、鼻がムズムズします。風邪の場合は1週間ほどで治りますが、花粉症シーズン中ずっとくしゃみが続きます。
鼻水 水のようにサラサラした鼻水です。抵抗がないため、出てくるまで気づかないことがあるので人前では注意が必要です。
鼻づまり 入眠時や睡眠時にはとくに鼻づまり症状を強く感じやすいため、睡眠不足や不眠などの睡眠障害を招きます。
眼のかゆみ 目のかゆみが強く出たり、涙が多くなります。
その他の症状 喉に花粉が入ることで乾いた咳が続きます。また、重症化すると気管支粘膜が腫れて、喉の痛みや呼吸がしにくくなる場合があります。また、皮膚のかゆみや湿疹、肌荒れ、耳のかゆみなどが目立ちます。熱っぽさや倦怠感などの症状もみられます。

花粉症の見分け

症状 かぜ(普通感冒) インフルエンザ アレルギー性鼻炎・花粉症 新型コロナウイルス感染症
鼻の症状 くしゃみ よくある ときにある 発作的で連続する まれにある 
鼻水 粘りのある黄色い鼻水 少量でサラッとした鼻水 透明でサラッとした鼻水 少量でサラッとした鼻水
鼻づまり よくある ときにある よくある まれにある
鼻症状の特徴 ・朝方の強い症状(モーニングアタック)
・特定時期(花粉飛散期)のみにおきる
・通年性だと1年中しばしば起きる
鼻以外の症状 ・鼻やのどの不快感から始まり、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、痰、咽頭痛、声のかすれ
・症状が進むと、熱っぽさやだるさといった身体全体の不調
・急に38℃以上の高熱や関節痛、筋肉痛、頭痛、悪寒などの全身症状が急激に現れる
・中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、脳症、ライ症候群、心筋炎など重い病気を合併することがある
・鼻のかゆみ
・目がかゆく、涙が出ることもある
・においや味がわかりにくい
・発熱はないが、あっても微熱
・典型的な初発症状はない
・37.5℃以上程度の発熱、痰を伴わない乾いた咳、頭痛、筋肉痛、吐き気(嘔吐なし)
・味覚障害・嗅覚障害、倦怠感、下痢、食欲不振
検査方法 なし 抗原検査 原因抗原を特定できる検査 抗原検査、PCR検査
治療方法 痛みや不快な症状をやわらげる対症療法が中心 対症療法に合わせて抗インフルエンザ薬を使用する 抗アレルギー薬、点鼻薬、点眼薬 対症療法が中心 肺炎に進展した場合は抗ウイルス薬、血栓予防の抗凝固薬、免疫の暴走を抑えるステロイド薬を適宜使用し、集中治療や人工呼吸器など

花粉症の検査

血液検査

血液検査によって、原因抗原を特定できます。スギやヒノキ花粉などのIgE抗体価を測定します。

 

花粉症の治療

薬物療法

抗アレルギー薬、点鼻薬、点眼薬があり、花粉症治療の中心ともなる治療方法です。

初期治療

花粉が飛散する1カ月ほど前から服薬治療を行います。鼻の粘膜が事前に過敏になるのを抑えて、症状をコントロールしやすくする方法です。気になる方は、ぜひご相談ください。

免疫療法

体内にアレルゲンを少しずつ入れて身体を慣れさせながら、根本的に体質を改善させる治療方法です。現在日本では、2014年より舌下免疫療法が導入され、スギ抗体を使用しています。治療継続性の維持が重要です。根気よく治療を続けることが大切です。

舌下免疫療法について

薬物療法やレーザー治療のような対症療法とは異なり、根本的にアレルギーを治療していく方法です。原因となるアレルゲンを用いて行う治療方法で、まずは原因となるアレルゲンを特定する検査と診断が必要です。舌の下に薬剤を投与して、アレルギー反応を起こさないような身体にしていく治療方法です。現在は、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の治療が可能です。治療期間は長く、3~5年ほどかかるので根気よく気長に治療を進めていきます。スギ花粉症における舌下免疫療法は、スギ花粉症の飛散時期中の治療はできないため、飛散終了時期の6月以降に治療をスタートできます。
一方、ダニアレルギーの治療は一年中いつでも治療が可能です。 注意が必要なのは、妊娠中や妊娠を希望している人の場合、継続であれば処方は可能です。舌下免疫療法を開始して、2週間ほどの増量期から維持期になると妊娠は可能です。

皮下投与法との比較

これまでの治療方法は、アレルゲンを皮膚に注射する皮下投与法を用いて行われていたため、頻回の通院が必要でした。しかし、舌下免疫療法では専門医師の指導のもと、初回以降ご自宅でご自身での投与が可能です。一定の効果が報告されている治療方法です。

舌下免疫療法の特徴

  • 薬剤投与時の痛みがない
  • 通院回数が皮下投与法より少なくて済む
  • 心身への負担が少ないので治療を継続しやすい

舌下免疫療法のQ&A

舌下免疫療法ってどんな治療?

原因となるアレルゲンを少量ずつ投与し、身体をアレルゲンに慣らしてアレルギー症状を緩和していく治療方法です。これまでの対症療法とは異なり、根本的な治癒が期待できる治療方法です。

どんなアレルギーに有効ですか?

現在、スギ花粉症及びダニアレルギー性鼻炎の治療が可能です。ハウスダストアレルギーの原因はほとんどがダニであることから、ハウスダストアレルギーの方にも有効です。

何歳から治療できますか?

20歳以上となります。

治療期間はどれくらいかかりますか?

最低でも治療期間は3~5年間、毎日舌の下に薬をおいて内服していきます。

治療始めるのに必要な検査は?

採血検査によって、スギ、ダニがアレルゲンである確認が必要です。

治療できない人はいますか?

妊娠中の方、妊娠希望している方(※継続であれば処方可能)、重症の喘息の方・重い心臓疾患がある方、服薬中の方は治療できません。また、高血圧の薬(ベータブロッカー)を内服している人は、ほかの薬に変更する必要があるので医師に申告してください。

通院回数はどれくらいですか?

治療開始後1週間おきに2回、それ以降は月1回(4週ごと)の通院になります。

いつでも治療スタートできますか?

スギ花粉症の場合は、スギの飛散時期中は治療できません。飛散時期を外した6月~12月に治療が可能です。ダニアレルギーの場合は一年中いつでも治療できます。

治療中はほかの薬は飲めませんか?

舌下免疫療法の治療中、アレルギーの症状が出た場合はこれまで服用していた薬は飲めます。ただし、ステロイド系の内服薬は控えてください。

日常生活に取り入れたい花粉症予防法とは

日常生活の中で、気を付けるだけで花粉症の症状が緩和できる予防方法をご紹介します。以下の点に気を付けて、これ以上悪化させないように気を付けてください。

外出時

よく晴れた日は花粉の飛散量が増えます。飛散量のピーク時間の正午から午後3時までの外出を極力避けます。外出時には、眼鏡・マスク・帽子を装着し、花粉が付きにくいツルツル素材のコートなどを羽織ってください。

帰宅時

外で付けてきた花粉を家の中に持ち込まないことが厳守です。玄関前で服や帽子に付いた花粉をパンパンと払ってから部屋に入ります。脱いだものは袋に入れて、手や顔を洗ってうがいも欠かさないようにしましょう。

洗濯

花粉の飛散シーズンは、洗濯物や布団を外に干すのをやめましょう。外干しした場合は、取り込む前にしっかりと花粉を振り落とします。室内は掃除機をかけます。

換気

飛散時期の晴れた日は、窓を開けないようにします。換気口に花粉除去用フィルターを装着するのもおすすめです。室内に花粉がある場合は、空気清浄機で花粉を取り除きましょう。

掃除

花粉は舞い上がったらなかなか落ちてこないため、濡れた雑巾で拭いたあと掃除機をかけましょう。カーテンやぬいぐるみなどの布製品は掃除機でしっかりと吸います。

マスク

鼻の粘膜に付着する花粉を減らします。さらに、保湿効果によって症状が幾分和らぎます。マスクと鼻や頬に隙間があると花粉が入り込んでしまうのでフィットさせてください。

生活習慣

生活習慣アレルギー性反応を起こしにくくするには、睡眠をしっかりと取ることで自律神経を正常に保ちます。栄養バランスの良い食事も大切です。香辛料やアルコール、喫煙は粘膜を刺激するので症状悪化につながります。

新型コロナウイルス感染症

概要

2019年12月に初めて中国で報告された新型コロナウイルス感染症(COVID−19)は、世界保健機構WHOがパンデミック(世界的大流行)を宣言しました。日本でも翌2020年1月16日に最初の患者が報告されて以降、新たな変異ウイルスが世界各地で確認されました。2023年5月5日、WHOがパンデミック終息を宣言し、日本でも5月8日より5類感染症の位置づけとなりました。現在はインフルエンザと同様の発熱を伴う感染症として考えられております。

症状

多くの場合は、一般の風邪と区別がつかないのが特徴です。ただし、新型コロナウイルス感染症特有の症状もあります。

コロナ以外での風邪でも見られる症状

新型コロナウイルス感染症に特有の症状

  • 味覚障害(味がしない、味がわからない)
  • 嗅覚障害(臭いを感じない、臭いがわからない)
  • 眼球結膜の充血(目が充血する、目が赤くなる)

予防

  • 不要不急の外出は避ける(うつされるだけではなく、うつす可能性もあるのです。)
  • マスクの着用、うがい(30秒以上)、手洗い(指を念入りに一本ずつ、手首まで洗う)

検査

  • 新型コロナウイルス抗原検査:保険適応。15分で結果が出る。
  • 新型コロナウイルスPCR検査:保険適応となった。必要に応じて自費や行政検査としても実施
  • 新型コロナウイルス抗体検査:過去の感染を調べたいとき
  • 新型コロナウイルス中和抗体検査:過去の感染、ワクチンの効果を調べたいとき

※検査は絶対ではない

治療・注意点

  • 新型コロナウイルス感染症の多くは、風邪と同じ軽い症状のまま自然に治癒します(そもそもコロナウイルスは一般的な風邪のウイルスです)ので、症状が軽い時は自宅療養してもよいでしょう。
  • 自宅療養の期間は、一般の方は発症から5日間かつ解熱後1日間(24時間)です。
  • 自宅療養中は、1日2回(朝・夕)体温を測り、体温と測った時間を記録してください。

受診の方法

  • 受診する場合には、咳やくしゃみがなくても、必ずマスクをつけてください。

当院では、抗原検査を行っております。一般の風邪と区別が難しくなっておりますが、しっかりと検査をして、コロナと診断された場合は抗ウイルス薬を内服することで早期の解熱、後遺症の予防につながると考えられております。

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